EMDR:トラウマにどうアクセスし、治療するか EMDR: Accessing and treating trauma

Description

アメリカの臨床心理士F・シャピロが1989年に発表したこの方法は、今日、英、米、独、仏、豪、スウェーデン、 イスラエル、北アイルランド、WHOなど世界中のPTSD治療ガイドラインで「実証された最も効果がある心理療法」 の1つとされている。同レベルの評価を得ている治療法には曝露療法、認知療法、ストレス免疫訓練がある。  他の方法との比較で、メカニズムの違いなどが議論されているが、EMDRでは曝露による消去という要素はさ ほど重視されていない。脳内の肯定的な記憶が否定的な記憶のネットワークに結びついていくという適応的情報 処理モデルという説明を用いる。EMDRでは宿題の形で曝露を促す必要はなく、苦しい曝露的な再体験は面接室 の中のみで、それも極力短く抑えることが可能である。EMDRは過去志向であり、生育歴の聴取は丁寧に行われ る必要がある。そもそもの歪んだ認知を受け入れるに至った、きっかけとなる過去の出来事を積極的に扱い、い わば過去を書き換える作業が可能だからである。  このように、過去の扱い方に関して、EMDRはこれまでの行動療法や認知療法とは大きく異なり、ある意味、 精神分析との親和性もあり、統合的な心理療法と言えるだろう。  EMDRでは、トラウマについて、映像、認知、感情、身体感覚などを同定し、25往復程度の素早くリズミカル な眼球運動などの両側性の刺激を導き、映像、身体感覚、認知などを問う。これを繰り返すことで、自然な連想によっ て、十分に肯定的な状態にまで至る。  最近では、発達障害児・者のタイムスリップ現象への適用が提案され、効果を上げ、注目されている。PTSDや 発達障害の適用事例を紹介予定である。  現在、日本EMDR学会(http://www.emdr.jp)は900名ほどの会員がいる。EMDRがクライエントの肯定的な力 を活かす方法であるという魅力を実習も交えて感じていただけたらと思う。

Format

Conference

Language

English

Author(s)

Masaya Ichii

Original Work Citation

Ichii, M. (2013, August). EMDR:トラウマにどうアクセスし、治療するか [EMDR: Accessing and treating trauma]. Presentation at the 4th Asian Cognitive Behavior Therapy (CBT) Conference, Toyko, Japan

Citation

“EMDR:トラウマにどうアクセスし、治療するか EMDR: Accessing and treating trauma,” Francine Shapiro Library, accessed May 17, 2024, https://francineshapirolibrary.omeka.net/items/show/22545.

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